「うつ病」と自分で言う人の心理とは?疑ってしまうときの注意点や接し方のポイントも解説
「自分はうつ病なんだ」と本人から言われたものの、普通に笑っているし、遊びにも出かけている――。
そんな姿を見ると、
「本当にうつ病なの?」
「ただ仕事を休みたいだけでは?」
「自称うつなのでは?」
と疑問を感じる人もいるでしょう。
しかし、本人が「うつ病」と口にする理由はさまざまです。また、外から元気に見えることだけで、うつ病かどうかを判断することはできません。
一方で、「自分はうつ病」と言っている人全員が医学的にうつ病と診断されているわけでもありません。
大切なのは、信じる・疑うの二択ではなく、診断と本人の苦痛、そして必要な支援を分けて考えることです。
1.「自分はうつ病」と言う人にはいくつかのケースがある
大きく分けると、
① 医療機関でうつ病と診断されている
② 医師からうつ状態などを指摘されている
③ 診断されていないが本人がうつ病だと思っている
④ 「うつ」という言葉を「つらい・落ち込んでいる」という意味で使っている
などがあります。
したがって、「うつ病と言っている」という情報だけでは、医学的な診断の有無までは分かりません。
2.心理①「自分の苦しさを分かってほしい」
本人が「うつ病」と伝える背景として考えやすいのが、
「今かなりつらい」
「普通に振る舞うのが難しい」
「少し配慮してほしい」
という気持ちです。
自分の状態をうまく説明できないため、「うつ病」という言葉を使って周囲に理解してもらおうとしている場合もあります。
この段階で「本当なの?」と追及すると、本人がさらに話せなくなることがあります。
3.心理②「助けてほしい」
直接、
「助けてください」
と言うことが苦手な人もいます。
その代わりに、
「最近うつっぽい」
「自分、うつ病かもしれない」
と伝えることで、間接的にSOSを出している場合があります。
「自分で言えているから大したことはない」とは限りません。
4.心理③「自分の状態に名前をつけたい」
原因の分からない、
不眠、疲労、無気力、涙、集中力低下などが続くと、
「自分に何が起きているのだろう?」
という不安が生じます。
そこでインターネットなどで調べ、
「これはうつ病なのかもしれない」
と考えることがあります。
診断名を知ることで、自分の状態を理解しようとしているわけです。
ただし、セルフチェックだけで確定診断することはできません。
5.心理④「自分を責める理由から解放されたい」
「仕事ができない」
「朝起きられない」
「何もする気になれない」
という状態が続くと、
「自分は怠け者なのでは?」
と自分を責める人がいます。
「これはうつ病かもしれない」と考えることで、自分の状態を医学的に理解しようとする場合があります。
ただし、反対に何でも病気だけで説明してしまうのも適切ではありません。診断は医療機関で総合的に判断します。
6.「自分からうつ病と言えるなら軽い」は間違い
うつ病について自分から話せる人もいれば、話せない人もいます。
病気について説明できる能力と、症状の重症度は別問題です。
そのため、
「本当にうつ病なら自分から言わない」
という判断には医学的な根拠がありません。
7.「笑っているから、うつ病ではない」も間違い
うつ病でも、
- 笑う
- テレビを見る
- 友人と話す
- SNSを使う
- 一時的に外出する
ことはあります。
症状には時間帯や状況による変化もあります。
一瞬笑ったという事実だけで「うつ病ではない」と判断することはできません。
8.「遊びには行けるのに仕事には行けない」は仮病?
これもよく疑われるパターンです。
しかし、
仕事=責任・評価・人間関係・時間的拘束・集中力が必要
なのに対して、
散歩や短時間の外出=本人のペースで中断できる
という違いがあります。
そのため、外出できるからといって就労能力が十分とは限りません。
一方、「何ができるか」は診断や復職を判断する重要な情報でもあります。
したがって、「遊べた=仮病」「遊べた=完全に回復」どちらも単純化しすぎです。
9.「SNSはできるのに仕事ができない」は?
スマホを眺める行為と仕事では、必要なエネルギーが違います。
仕事では、
起床する
↓
身支度する
↓
移動する
↓
人と話す
↓
集中・判断する
↓
責任を負う
必要があります。
ベッドでSNSを見るだけなら、その負荷ははるかに小さくなります。
したがって、スマホが使えることだけで就労可能とは判断できません。
10.では「自称うつ」の人はいないの?
医師の診断を受けず、自分で「うつ病」と考えている人は当然います。
例えば、
一時的な落ち込み
睡眠不足
強いストレス
適応障害
不安症
身体疾患
などを、本人が「うつ病」と表現している可能性もあります。
だからといって、
「うつ病ではない=つらくない」
とは限りません。
診断名が違っても、本人が困っていること自体はあり得ます。
11.うつ病以外の病気が隠れていることも
本人は「うつ病」と思っていても、実際には、
- 適応障害
- 不安症
- 双極性障害
- 睡眠障害
- ADHDなどに伴う二次的な不調
- 甲状腺疾患などの身体疾患
が関係している場合があります。
特に双極性障害では、うつ状態だけを見ていると単極性うつ病との区別が難しい場合があります。
そのため自己診断だけで治療方針を決めるのは避けた方がよいでしょう。
12.「病気を理由にしているように見える」ときは?
周囲が困るのは、
「うつ病だから仕事は全部代わって」
「病気なんだから何をしても仕方ない」
というように感じる場面でしょう。
ここでは、
病気への理解と行動上のルールを分けることが重要です。
うつ病であることと、あらゆる行動が許されることは同じではありません。
職場なら、本人と周囲だけで抱えず、上司・人事・産業医などを通して、業務量や配慮の範囲を具体化する方がよいでしょう。
13.「本当かどうか」を問い詰めない
本人から「うつ病」と言われたとき、
「診断書あるの?」
「本当に医者に言われたの?」
「でも元気そうじゃん」
と問い詰めると、対人関係が悪化しやすくなります。
プライベートな関係なら、
「そうなんだ。今かなりつらい?」
くらいから話を聞く方が自然です。
診断の真偽を周囲が判定する必要はありません。
14.だからといって何でも肯定する必要もない
相手を支えることと、
相手の要求をすべて受け入れること
は別です。
例えば、
「今日は話を聞けるけど、深夜ずっと電話するのは難しい」
と伝えて構いません。
相手の苦痛を否定せず、同時に自分の生活や限界も守ることが大切です。
15.接し方① まず「診断」より「困っていること」を聞く
「本当にうつ病なの?」
より、
「今、一番困っていることは何?」
と聞く方が役立ちます。
例えば、
「眠れていない」
「会社へ行くと動悸がする」
「食事ができない」
という具体的な問題が分かれば、必要な支援も考えやすくなります。
16.接し方② 「頑張れ」より具体的な援助
励ますつもりで、
「頑張れば大丈夫」
「気持ちの問題だよ」
と言っても、状態によっては負担になります。
代わりに、
「病院まで一緒に行こうか?」
「今日は食事を買ってこようか?」
「会社への連絡を整理しようか?」
など、具体的な提案の方が役立つ場合があります。
17.接し方③ 回復を急かさない
「もう1か月休んだんだから治ったでしょ」
というように期限を決めることはできません。
うつ病の回復速度には個人差があります。
また、
少し良くなる → また調子が落ちる → 再び改善する
と波を伴うこともあります。
一日の様子だけで「治った」「悪化した」と判断しない方がよいでしょう。
18.職場では「本人の自己申告」だけで判断しない
職場では、同僚が病気の真偽を判断する必要はありません。
休職や業務上の配慮が必要なら、
主治医の診断書
+ 産業医などの意見
+ 実際の業務遂行状況
などをもとに会社が判断します。
「本人がうつ病と言っているから全部免除する」「元気そうだから配慮しない」という両極端を避けることが重要です。
19.家族は「監視役」にならない
家族が心配するあまり、
「今日は何時に起きた?」
「本当に薬飲んだ?」
「外出できるなら働けるんじゃない?」
と毎日チェックすると、本人との関係が悪化する場合があります。
家族だけで治療を管理しようとせず、治療については医療者と役割を分けることが大切です。
20.本人がまだ病院へ行っていない場合
「自分はうつ病だ」と言っているものの医療機関を受診していないなら、
「本当にうつ病か証明してきて」
ではなく、
「そこまでつらいなら、一度専門家に相談してみたら?」
と勧める方がよいでしょう。
診断だけでなく、身体疾患やほかの精神疾患との鑑別にも意味があります。
21.本人に言わない方がよい言葉
例えば、
「甘えているだけ」
「みんなつらいよ」
「考えすぎ」
「気合いが足りない」
「遊べるなら働けるでしょ」
「本当にうつ病なの?」
などは、本人の状態を十分に知らない段階では避けた方がよいでしょう。
反対に「絶対にうつ病だよ」と周囲が診断を確定することも避けます。
22.こんな言葉なら伝えやすい
例えば、
「そうなんだ。最近どんな状態なの?」
「眠れてる?」
「生活で一番困っていることは何?」
「まだ受診していないなら、一度相談してみてもいいかもしれないね」
といった聞き方なら、診断を決めつけずに本人の状態を確認できます。
23.「死にたい」と言われたら軽く扱わない
「うつ病」と話している人が、
「消えたい」
「死んだ方がいい」
「自分なんていない方がいい」
などと話した場合には、「注目してほしいだけ」と決めつけないことが重要です。
自殺について話すこと自体を理由に「本当にする人は言わない」と判断することもできません。
具体的な自殺の計画や切迫した危険がある場合には、本人を一人にせず、緊急の医療的支援につなげる必要があります。
24.「本当にうつ病なの?」と思ったときの考え方
周囲が判断できるのは、その人の生活の一部分だけです。
したがって、
笑っている
↓
うつ病ではない
外出した
↓
働ける
自分から病名を言った
↓
仮病
という判断はできません。
一方で、
本人が「うつ病」と言った
↓
医学的にうつ病で確定
とも限りません。
最も現実的なのは、
「診断は専門家に任せる。自分は困っていることと必要な対応を見る」
という姿勢です。
まとめ
「信じるか、疑うか」だけで考えない
「自分はうつ病」と言う人には、
医療機関ですでに診断されている人
自分のつらさを理解してほしい人
助けを求めている人
自分の症状をうつ病だと思っている人
など、さまざまなケースがあります。
だから、
「自分から言う人は偽物」でもなければ、
「本人が言うなら必ずうつ病」でもありません。
接するときは、
① 病名の真偽を自分で判定しない
② 本人が何に困っているかを聞く
③ 必要なら医療機関への相談を勧める
④ 相手を支えながら自分の限界も守る
という考え方が大切です。
「うつ病かどうか」と「その人が今つらいかどうか」は別の問題です。 診断は医療者に任せ、周囲は外見だけで決めつけず、具体的な困りごとに目を向けるのが適切な接し方です。


