不眠症(睡眠障害)とは

不眠症(睡眠障害)とは

不眠症は、睡眠に関する一連の問題を指します。具体的には、眠りにつくまでに時間がかかる「入眠障害」、夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」、朝早くに目覚めてその後眠れなくなる「早朝覚醒」、睡眠時間は十分なのに眠りが浅い「熟眠障害」といった症状があります。
これらの症状は、日中の慢性的な疲労感、集中力の低下、情緒不安定、食欲不振などを引き起こし、日常生活に大きな影響を与えます。不眠症は、短期間で自然に解消されることもありますが、慢性化すると自力での改善が難しくなります。

入眠障害 眠りにつくまでに時間がかかる
中途覚醒 夜中に何度も目が覚める
早朝覚醒 朝早くに目覚めてその後眠れなくなる
熟眠障害 睡眠時間は十分なのに眠りが浅い

不眠症(睡眠障害)の原因

日常のストレス

現代社会では避けられないストレスが、不眠症の大きな原因の一つです。
仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、将来への不安など、心配ごとが尽きないと、夜になっても心が落ち着かず眠りにつきにくくなることがよくあります。ストレスは交感神経を活発にし、体を覚醒状態に保つことで、安らかな睡眠への移行を阻害する原因となります。
リラックスを促す活動や、ストレス管理のためのテクニックを学ぶことが、不眠症の改善に有効です。

日々の生活習慣

現代の生活習慣は、夜遅くまで続くデジタルデバイスの使用や、カフェインの摂取、そして不規則な睡眠スケジュールなど、不眠症を引き起こす原因がたくさんあります。 特にスマートフォンやテレビから放出されるブルーライトは、脳を刺激してメラトニンの分泌を抑え、睡眠の質を低下させます。
カフェインは神経を刺激し、眠気を遠ざけるため、夜間の摂取は避けるべきです。また、一貫性のない就寝時間は、体内の生物学的リズムを乱し、睡眠パターンを不安定にする要因となります。
健康的な生活習慣を心掛けることで、睡眠の質を向上させることができます。

心身の疾患

心の健康問題、例えばうつ病や不安障害、または慢性的な痛みを引き起こす身体的な病気がある場合、それが睡眠に悪影響を及ぼすことがよくあります。
これらの病状は、深夜に何度も目を覚ます、眠りが浅いなど、不眠症へと直接つながる可能性があります。
健康に何らかの問題を抱えていると感じたら、早期に医療の専門家に相談し、適切なアドバイスや治療を受けることが大切です。
不眠症の根本的な原因に対処することで、睡眠の質を向上させることが期待できます。さらに、心のストレスを軽減するために、家族や友達と積極的に話をすることが、不眠症の改善に寄与することがあります。
心と体の両方の健康をケアすることで、より質の高い睡眠へと導かれます。

不眠症(睡眠障害)の治療

生活習慣の見直し

生活リズムが乱れていると不眠を引き起こすことがあります。
毎日決まった時間に就寝し起床する習慣をつけることが重要です。夜遅くのカフェイン摂取や、寝る前のスマートフォン、テレビ画面の使用は避けたほうが良いでしょう。
身体を動かす活動も睡眠の質を向上させますが、就寝前の過度な運動は控え、日中に軽い運動を取り入れることが望ましいです。

認知行動療法

認知行動療法は、慢性不眠症の改善に役立つ自己実施可能な方法です。
この療法は、不健康な睡眠に対する考え方や行動パターンを見直し、改善することを目指します。具体的には、次の3つのステップが推奨されます。

  • Step

    01

    眠くなるまでベッドに入らない

    ベッドを快適な睡眠の場所として認識させるためです。無理にベッドで過ごすと体がベッドを睡眠の場所だと認識しにくくなります。

  • Step

    02

    睡眠効率を高める

    睡眠効率は、ベッドにいた時間に対して実際に眠れた時間の割合です。85~90%を目標にしましょう。この効率を把握するために、睡眠日誌に記録するのも良いです。

  • Step

    03

    リラクゼーションのための簡単な体操や筋弛緩法を取り入れる

    寝る前や夜中に目が覚めてしまったときに、リラクゼーションのために簡単な体操や筋弛緩法を取り入れましょう。全身をリラックスさせることは睡眠の質を向上させるのに有効です。

  • Step

    04

    体内時計のリセット

    起きたら太陽の光を浴びること(体内時計を毎日正しくセットする)。

薬物療法

睡眠導入剤などによる治療を行います。依存や副作用も少ない薬を使用します。
睡眠薬にもいろいろな特徴があり、強力なものから弱いものや、長時間作用するもの、中間型、短時間型にわけられ、それぞれ不眠症の型、原因、程度に合わせて処方されます。

不眠症(睡眠障害の治療の流れ)

不眠症のタイプが4種類あるということは上で述べました。まず、不眠症のどのタイプにあてはまるのかを問診でお聞きします。人によっては不眠症のタイプが2種類以上に及ぶこともあるので、そこもきちんとお聞きします。そうしてから、不眠症のタイプに応じた薬を処方したり、認知行動療法(睡眠に対しての考えを修正するアドバイス)を行っていきます。
不眠症はある程度長期間(個人差はありますが、半年~数年)きちんと加療することが大切です。そして、自然な眠りが出てくるようになってきたら、徐々に薬を減量していき、治療が終了となります。

よくある質問

寝酒は駄目ですか?

アルコール(エタノール)には催眠作用があり、入床前に寝酒すると寝付く助けにはなりますが、夜中に効果が切れ、睡眠の後半では目が覚めやすくなります。
アルコールは睡眠の質を低下させるため、夜間に何度も目が覚めたり、眠りが浅い状態になったりします。トイレに行きたくなって目が覚めることもあります。
また、寝酒が続くと体がアルコールに慣れ、量を増やさないと眠れなくなり、アルコール依存症に陥ってしまう危険性もあります。
不眠が続く場合は、お酒に頼らずに医師に相談してください。

不眠症と睡眠不足の違いは何ですか?

不眠症と睡眠不足はよく混同されがちですが、まず睡眠不足は、就労や学習、不規則な生活などにより、偏った睡眠習慣となり、その人にとって十分な睡眠が得られずにいる状態をいいます。ただし、必要な睡眠時間は、年齢による差や個人差があります。日中、眠気のために仕事や家事に困難を感じなければ、睡眠不足の心配はないでしょう。
一方、不眠症は、精神、身体、神経等の病気などのために、主観的に眠りたいのに眠れず、不眠の症状や日中の活動に影響が続く状態をいいます。
一時的な環境の変化やストレスなどで、数日間眠れない状態は一過性不眠といい、原因が解決すれば眠れるようになりますが、生活上の工夫を行っても不眠の症状が1ヵ月以上続く場合には、治療が必要な場合もありますので、医師に相談してください。

睡眠時間は何時間取るのがいいですか?

米国で行われた110万人の男女を対象とした「睡眠と死亡率」の調査では、最も死亡率が低かったのは、睡眠時間が7時間の人でした。
必要な睡眠時間については、成長や加齢とともに変化することがわかっています。
小学生では9~10時間,その後20歳頃までに7~7.5時間になります。10歳代では個人差が大きく,7時間で十分な中学生がいる一方で,8時間以上の睡眠が必要な大学生もいます。成人後は必要な睡眠時間はあまり変化せず安定します。
ところが、実際の睡眠時間は、眠るために布団に入っている長さは15~19歳では7.3時間と明らかに睡眠不足であることが分かります。逆に60歳以降どんどん長くなり,70~74歳男性で8.0時間,女性で7.6時間と明らかに長すぎることが分かります。

眠るためには、睡眠薬はいつ服用すればよいでしょうか?

睡眠薬は、体が寝る準備に入っているときに服薬しないと効果が出にくくなりますので、服用する時間帯に注意が必要です。
睡眠薬は、普段寝る時間を参考にしながら、眠る直前に服用し、服用後はすみやかに床につくようにしましょう。服用後にしばらく起きて活動していると、寝つくまでの行動や会話などを忘れてしまうなどの、一時的な記憶障害がおこることがあります。
また、一部の睡眠薬では、脱力やふらつきなどの副作用があるため、転倒を避けるためにも服用後は、すみやかに床につくようにしましょう。
また、睡眠薬によっては、食後すぐに服用すると体内に吸収される際に影響を受け、血液中のお薬の濃度にも関係して効果が出にくくなる場合があります。夕食後、ある程度の時間をおいて、眠る直前に服用するようにしましょう。

市販の睡眠薬(睡眠改善薬)も不眠症に効果があるでしょうか?

市販の睡眠改善薬は、抗ヒスタミン薬といって、風邪薬やアレルギー薬の眠くなる成分です。つまり、本当の睡眠薬ではありません。市販の薬は、連用すると効果が減弱する(耐性が生じる)、大量に服用すると腎障害を起こすことなどから、「一時的な不眠」に対して使用することが原則となっており、医師から「不眠症」と診断された場合には使用しないこととなっています。

睡眠薬をやめられなくなるのではないか心配です。

「睡眠薬を服用すると、やめられなくなる(依存症になってしまう)のでは…?」と不安に感じる人も少なくありません。
かつて使われていたお薬の中には、依存性の強いものもありましたが、現在使われている睡眠薬は、継続して服用しても強い依存性はないといわれています。
また、眠れるようになってきたら、徐々に薬を減らしたり、薬をやめるようにするなど、医師と相談しながら治療法を選択していくという考え方が主流になっています。
不眠症は慢性疾患ですので、ある程度の期間お薬の服用が必要です。怖がって、お薬を飲んだり、飲まなかったりするのが一番よくありません。
睡眠薬による治療をして、不眠が改善している場合には、休薬に向けて少しずつ量を減らしていく方法(減薬)などもあります。
ただし、症状が改善したからといって、ご自身の判断で急にお薬を中止したり減量したりすると、症状が悪化する場合がありますので、休薬を考える場合は、必ず医師に相談してください。