ADHD(注意欠陥多動性障害)とは

ADHD(注意欠陥多動性障害)とは

ADHDは発達障害のひとつに分類され、一般的には子供の頃より宿題を頻繁に忘れるなど既に症状が出ていることが多いのですが、大人の場合でも就職後や、職場を異動後に、その特性から問題や不適応を起こすことがあります。

注意欠陥多動性障害(ADHD)の原因

ADHDの正確な原因はまだ特定されていませんが、脳の働きの問題が関与していると考えられています。脳の一部である前頭前皮質の発達の遅れや、ドーパミンなどの神経伝達物質の異常など、脳内の様々な要因が関係していると考えられています。
また、遺伝的要因と環境的要因の両方が影響を及ぼしていると指摘されています。親にADHDがいると発症リスクが高くなるほか、母体の喫煙や飲酒、鉛の接種なども危険因子とされています。

注意欠陥多動性障害(ADHD)の症状

注意欠陥多動性障害の症状は注意の欠陥(不注意)多動に分けられます。

  • 注意の欠陥(不注意)の症状
    • ケアレスミスをする
    • 物事や作業を順序立てて行うことが苦手
    • 昔から忘れもの、なくしものが多い
    • 片付けるのが苦手
    • 約束や期日を守れない、間に合わない
    • 時間管理が苦手である
    • 注意を持続することが困難
    • 上の空や注意散漫で、話をきちんと聞けないように見られる
    • 課題や活動を整理することができない
    • 精神的努力の持続が必要な課題を嫌う
    • 課題や活動に必要なものを忘れがちである
    • 外部からの刺激で注意散漫となりやすい
    • 日々の活動を忘れがちである
  • 多動の症状
    • 落ち着きがない
    • 貧乏ゆすりなどをしてしまう
    • 着席中に、手足をもじもじしたり、そわそわした動きをする。
    • 着席が期待されている場面で離席する。
    • 不適切な状況で走り回ったりよじ登ったりする。
    • 静かに遊んだり余暇を過ごすことができない。
    • しゃべりすぎる
    • 質問が終わる前にうっかり答え始める。
    • 順番待ちが苦手である。
    • 他の人の邪魔をしたり、割り込んだりする。
    • 思ったことをすぐに口にしてしまい、悪気はないのに同僚を怒らせてしまう
    • つい衝動買いをしてしまう
    • 衝動に駆られて突き動かされるような感じがして、じっとしていることができない。

注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療法

薬物療法(ADHDの治療薬)

  • コンサータ(メチルフェニデート)

    中枢神経を刺激して、脳内の神経伝達物質(ドパミン、ノルアドレナリン)の調節をすることで行動の問題が改善されます。ADHDの治療薬として第一選択ですが、厳密に使用する目的で「適正流通管理委員会」が定められ、処方出来る医師と薬局が限られています。
    当院では「適正流通管理委員会」の条件を満たしているので処方可能です。

  • ビバンセ

    日本では18歳未満にしか承認されていない薬剤です。コンサータと同様。「適正流通管理委員会」の管理のもと、処方出来る医師と薬局が限られています。この薬も当院では処方可能です。ビバンセの作用機序は明らかにされています。ビバンセは「プロドラッグ」という性質を持っています。これは、体内に吸収された後に別の成分に変化することで本来の薬効を発揮するお薬です。ビバンセは、吸収された後に血液中でアンフェタミンに変化します。このアンフェタミンは脳の中枢神経を刺激して、ドパミンの濃度を高める作用があります。

  • ストラテラ(アトモキセチン)

    正確な機序は不明です。難解な用語での仮説ですが、ノルアドレナリン系に作用し、注意及び衝動制御の調節作用が得られる薬剤とされています。中枢神経刺激作用はない薬剤です。
    1日を通して効果が期待される薬剤ですが、効果発現まで治療開始後4-6週間という時間がかかります。

  • インチュニブ(グアンファシン塩酸塩)

    従来、本態性高血圧治療薬として使用されていたインチュニブが、これも仮説で難解な用語ですが、ノルアドレナリンα2A受容体に作用し効果を示すと考えられています。主に多動に効果を示すことが多いです。

心理社会的治療

  • 環境調整

    学校や会社に病気のことを理解して頂き、患者様が関わる保護者や教師など、関係者がその特徴を理解し、自分のとるべき行動を理解しやすいような対応ができるようにしていきます。

  • ソーシャルスキルトレーニング

    患者様が状況に応じた適切な行動が取れるように社会のマナーやルールを学び、対人関係を良好に保つことを学びます。状況を具体的にわかりやすく提示し、達成する喜びなどを得る方法として行動療法などが実施されます。

注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療の流れ

ADHDの治療の第一選択薬であるコンサータを処方します。この薬剤療法のみでかなり改善する方がほとんどです。それに加えて、心理社会的治療である環境調整やソーシャルトレーニングを併用することもあります。ADHDが完治するかはさまざまな議論がありますが、症状を緩和していき、社会適応して長年に渡る治療を要します。

よくある質問

ADHDに向いている仕事はどんなものですか?

ADHDの方は、個人の特性によっても異なりますが、自分の興味のある分野に特化した仕事や、マニュアル通り・ルーティンでできる仕事、発想力を活かせる仕事などが適職です。 たとえば、研究者・ジャーナリスト・プログラマー・デザイナーなどです。 また、働き方としては、フレックス制やテレワーク、フリーランスなどがよいでしょう。

ADHDは遺伝疾患ですか?

遺伝する可能性はあると言われています。親がADHDである場合、子に遺伝する可能性は約70%程度です。
一方で、遺伝要因以外の原因も指摘されていますので、すべてが遺伝で説明できるものではありません。

ADHDに他の精神疾患が合併することはありますか?

あります。ADHDと診断された人の3~5割が、成人になっても日常生活に何らかの支障があると感じています。そのようなADHDの症状のために、なかなか周囲に溶け込めず、挫折をしたり落ち込みが強くなって、うつ病、パニック障害などを合併する人も多くいます。

大人のADHDとはどんなものですか?

子どもの頃は本人の適応力や努力、また、周りのサポートによって対処できていて、医療機関に相談しないことが意外と多いです。
その場合、大人になって、働いたり、人間関係が複雑になったりしてから、環境に適応できなくなり、自分の行動や思考の仕方が他と異なることに気づきます。
同僚や上司から指摘されて自覚することも多いようです。大人になってからADHDの症状が顕在化して医療機関を受診し、初めてADHDと診断されます。

有名人にADHDが多いというのは本当ですか?

本当です。ADHDの人はこだわりが強く能動的であるため、適性に合った仕事に就くと才能が伸ばせる可能性があります。
実際には、長嶋茂雄(元プロ野球選手)黒柳徹子(タレント)さかなクン(タレント・魚類研究家)ジミー大西(タレント・画家)SEKAI NO OWARIの深瀬慧(ミュージシャン)ウィル・スミス(俳優)マイケル・フェルプス(競泳選手)シモーネ・バイルズ(体操選手)などなどが該当します。皆さん、とても有名でなおかつ活躍しています。
ですので、ADHDが必ずしも病気ということででマイナスではなく、ADHDの特性を伸ばして逆にプラスに働く場合もあるわけです。
また、歴史上の人物でもADHDを持っていた著名人がいるので挙げておきます。

  • トーマス・エジソン: 発明家として知られるエジソンは、多動性や衝動性の特徴を持っていたとされています。彼の絶え間ない好奇心とエネルギーは、数々の発明を生み出す原動力となりました。
  • レオナルド・ダ・ヴィンチ: 多岐にわたる分野で活躍したダ・ヴィンチも、ADHDの特徴を持っていた可能性があると言われています。彼の多動性と注意欠陥が、同時に複数のプロジェクトに取り組む動機となり、その結果、多くの傑作を生み出しました。
  • ウィンストン・チャーチル: 第二次世界大戦中のイギリス首相であったチャーチルも、ADHDの特徴を持っていたと言われています。彼の強い意志と情熱が、困難な時期において国を導く力となりました。

ADHDのサインはどのように現れますか?

ADHDのサインは、注意が続かない、過度に動き回る、衝動的な行動をとることです。例えば、学校の授業中に席を立ったり、話を遮ったり、忘れ物が多いなどの行動が見られます。これらの行動は、家庭や学校、職場で問題を引き起こすことがあります。

ADHDを放置するとどんな影響がありますか?

ADHDを放置すると、学業や仕事のパフォーマンスが低下し、人間関係にも影響を与えます。例えば、注意力の欠如からミスが多くなり、成績や評価が下がることがあります。また、衝動的な行動から友人や同僚とのトラブルが増えることもあります。これにより、自尊心の低下やストレスが増し、さらなる問題を引き起こすことがあります。

ADHDはどのくらいの頻度で診断されますか?

ADHDは、子どもの約5%に見られ、成人にも続くことが多い障害です。近年では、早期発見と介入が重視されています。

ADHDの治療にはどのくらいの時間がかかりますか?

ADHDの治療期間は個人差がありますが、通常は数ヶ月から数年にわたり行われます。治療は継続的に行われることが重要で、症状の管理に焦点を当てます。

ADHDの治療には薬が必要ですか?

ADHDの治療には、主に行動療法や薬物療法が用いられます。薬物療法は、注意力を高め、衝動的な行動を抑えるために使用されます。医師の指導のもとで安全に使用することが重要です。

ADHDの診断はどのように行われますか?

ADHDの診断は、医師や心理士が行う評価や観察、標準化された評価ツールが使用されることが一般的です。

ADHDの人は感覚過敏を持つことが多いのはなぜですか?

ADHDの人は、感覚過敏(音、光、触覚など)を持つことが多く、環境からの刺激に対して過敏に反応することがあります。これに対する対策を講じることが重要です。

ADHDの人は集団生活に適応できますか?

ADHDの人は、適切なサポートと訓練を受けることで、集団生活に適応することが可能です。社会スキルトレーニングが有効です。

ADHDの人は特定の食べ物を避けることが多いのはなぜですか?

ADHDの人は、感覚過敏や食感の好みから特定の食べ物を避けることが多いです。バランスの取れた食事を確保するために工夫が必要です。

ADHDの人はストレスを感じやすいのはなぜですか?

ADHDの人は、環境の変化や社会的な状況に対してストレスを感じやすいことがあります。ストレス管理のスキルを身につけることが重要です。

ADHDの人はどのようにストレスを管理すれば良いですか?

ADHDの人は、リラクゼーション技術や適度な運動、規則正しい生活リズムを取り入れることが効果的です。また、サポートグループやカウンセリングも有効です。

ADHDの人は運動が苦手なことが多いのはなぜですか?

ADHDの人は、運動の協調性に問題を抱えることが多く、運動が苦手と感じることがあります。適切な運動プログラムを通じて運動能力を向上させることができます。