強迫性障害とは

強迫性障害とは自身の意思に反して頭の中で不合理な思考が浮かび、その不安を解消するために無意味な行為を繰り返してしまう精神疾患のことです。例えば、外出時に自宅の鍵をかけたか不安になり何度も自宅に戻り鍵の確認をしたり、過度に手を洗ったりしてしまうなどが強迫性障害の症状にあたります。強迫性障害は、思春期から20歳前後にかけて発症する場合が多いとされています。治療を行わないと中高齢になっても症状が続いてしまう場合があるため、強迫性障害の可能性を感じたら早急に当院へご相談ください。
強迫性障害の症状
- 不潔恐怖(強迫観念)から手洗いを繰り返す(強迫行為)
- 車で人をはねてしまう、プラットフォームで人を突き落としてしまうイメージが離れられず(強迫観念)、運転または駅に行くのをやめてしまう(回避行動)
- 鍵をかけたか、心配になり何度も家に戻り確認してしまう
- 家のストーブ、ガス栓を消したのか、何度も確認してしまう。
- 衣服を着るときなどに、必ず決められた順序で行わなくてはいけないと考えてしまう。
(順番を間違うと最初からやり直してしまい、1つの行為に長時間を費やしてしまう。) - 自分の決めた手順でものごとを行なわないと、恐ろしいことが起きると考え不安になり、いつも同じ方法で仕事や家事をしなくてはならない。
- 数字にこだわり、手洗いをしていても、決まった数字になるまで洗い続ける。
強迫性障害の原因
原因や発症に関わる特異的な要因ははっきりしていません。しかし、不安が増大しやすい現代にあって、自らを、あるいは大事なものを守ろうとする過剰な防衛反応として、強迫症状が誘発されやすい可能性があります。多くの方が対人関係や仕事上のストレス、妊娠、など生活上の大きな変化が発症契機となります。
強迫性障害の治療
強迫性障害の治療は、薬物療法と心理療法が中心となります。このうち薬物療法では、主に選択的セロトニン再取り込み阻害薬が用いられますが、症状が重いケースでは少量の抗精神病薬を併用することもあります。心理療法では、認知行動療法の一種である曝露反応妨害法などを行います。これは、あえて強迫症状が出やすいような場面に直面させ、しかも強迫行為を行わないように指示します。当初は不安を感じますが、徐々に不安感が消えていきます。
よくある質問
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強迫性障害について母親が原因のひとつと考えられるのは、どのような場合ですか?
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妊娠中の母親によるカフェインやアルコールの過剰摂取、喫煙が関係する可能性があります。ただし強迫性障害の原因については、遺伝的および環境的リスク要因がどのように相互作用して、多様な表現型がもたらされるのかというメカニズムの理解は、依然としてほとんど不明です。
海外の研究では、母親側の因子が強迫性障害の発生に関係することが示唆されています。
例えば、母体の炎症や免疫にかかわる病気、母親の喫煙が強迫性障害の発症と関連するという説があります。
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強迫性障害を気にしない方法はありますか?
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強迫性障害は、引きこもったり生活リズムが乱れることで悪化しやすいと言われています。 そのため、規則正しい生活や十分な睡眠、外出を心がけることが大切です。 もし可能なら、学校や仕事などの社会的な関わりも続けることが有効です。 強迫性障害の症状にとらわれて、すべての時間やエネルギーを注ぎ込むと、病気がさらに悪化しやすくなります。
強迫性障害を気にしないための具体的方法として、一例として、以下のアプローチがあります。
また曝露反応妨害法というのもあります。
不安を引き起こす状況に直面し、不安が和らぐまでその状況に慣れていく方法です。
また、不安を軽減するために行っている強迫行為を我慢することで、徐々に不安に対処する力をつけることが推奨されています 。
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強迫性障害に向いている仕事はどんなものですか?
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強迫性障害の方が仕事探しをする際には、以下のようなポイントを確認しましょう。
- 自分のペースで仕事ができるかどうか
- 強迫行為が起こっても仕事に支障が出ないかどうか
- 仕事上で確認作業が多くないかどうか
- ミスのできない仕事かどうか
- 一人でできる仕事かどうか
- 仕事が遅いと周りに迷惑がかかるかどうか
上記のようなポイントを押さえた上で強迫性障害(強迫症)に向いている仕事をいくつかあげます。必ずしもすべての強迫性障害の方に向いている仕事というわけではありませんので、あくまでも一例としてご参考ください。
- ライター、WEBライター
- データ入力業務
- DTPデザイナー、WEBデザイナー
- 工場の作業スタッフ
- 歩合制の営業職
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強迫性障害に向かない仕事はどんなものですか?
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強迫性障害の方にとって、不向きな仕事や苦手なこととして、確認作業の多い仕事やミスの許されない仕事、汚れなど強迫観念を生じる仕事、自分のペースでできない仕事が挙げられます。例えば下記の仕事です。
- 確認項目の多い事務職
- ミスが許されないデータ入力業務
- 清掃員
- 警備員
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強迫性障害を治すコツはありますか?
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治すコツを挙げます。
①焦らずに一歩一歩治療することを心がける
早く症状をよくしたい気持ちは大切ですが、焦ってしまうのはよくありません。
強迫性障害は、よくなったり悪くなったりを繰り返しながら徐々に回復していきます。悪くなった時に焦ってしまうと症状の悪化を招いたり、物事が悪い方向に進んでしまうことがあります。
調子が悪くなって病院を変えようとしたり、薬の用法・用量を勝手に変えることもやめましょう。
なるべく、焦らずにじっくり治療していくことを意識してみてください。それが治療の最短距離の道です②治療を途中でやめない
少し良くなったからといって、治療を途中でやめないようにしましょう。強迫性障害は、良くなったり悪くなったりを繰り返します。
症状がかなり安定してきて、医師が治療をやめてもいいと判断するまでは治療を続けましょう。
強迫性障害は少しずつ時間をかけて治療していく病気ですが、もし治療を長く続けていても症状が改善されない場合は他の病気が併発している可能性があります。
その場合は、あらためて医師に相談してみましょう。③周囲のサポートを受ける
強迫性障害は、10代や20代の若い時期に発症することが多い病気です。
まだまだ経験が足りていなかったり不安に感じることが多い年代なので、家族や友人に協力を頼んでみてください。
家族や友人の励ましで、症状がよくなる可能性も高まります。さらに、自分だと気付かなかったような改善点に気付ける場合もあるでしょう。
ひとりで抱え込まずに、まずは協力をお願いしてみましょう。④不安になったら軽く運動したり、趣味をしてみる
無理をしないことが前提ですが、強迫観念が出てきたら軽く運動したり趣味をして、気を紛らわせてみましょう。
たとえば、ジョギングや散歩、軽い筋力トレーニングなどがおすすめです。運動を日常生活に取り入れることで、不安が軽減される効果も期待できるので、ぜひ試してみましょう。
趣味は音楽を聴いたり映画を見たり、読書や軽いスポーツなどがおすすめです。あまり激しくない趣味を選びましょう。
強迫観念が出ている時は、なかなか集中できないかもしれませんが、日常生活に取り入れることで気分転換やリラックスの効果が得られます。
症状が出にくくなったり、軽減される可能性も上がるので参考にしてみてください。⑤疲労やストレスをため込まない
強迫性障害による強迫観念や強迫行為をしている時、脳は常に緊張状態になっています。ストレスもかかり続けているので、うつ病などを併発するリスクも高まります。
思考がさらに混乱してしまう原因にもなるので、疲労やストレスを感じたら無理せずに休むことを心がけましょう。
自分が思っている以上に身体や精神は、疲れている可能性があります。そのような時は、瞑想がおすすめです。
深い呼吸で、まずは5分間呼吸に集中してみましょう。脳がすっきりして、リラックスできます。
お風呂に入るなどの、あまり頭を使わないような疲労回復の方法もおすすめです。⑥行動日記をつけてみる
以下のように、今日の行動日記をつけてみましょう。
日付と時刻 出来事 自分の行動 4月5日 8:15 家から駅まで外出したが、エアコンを消したか心配になった。 駅から自宅に逆戻りして、エアコンを確認したらエアコンは消えていた。 4月12日 13:20 電車に乗って、手すりに手が触れて汚れが気になった。 除菌シートで何度も手を拭いた。 4月25日 19:15 新しく買った雑貨をジュースで汚してしまい、汚れが気になった。 雑貨を何十回も拭いた。 日記をつけると、日常生活でどのような場面の時に強迫性障害の症状が出てくるのかが分かるようになります。
行動日記を継続的に記録することで、自分自身の強迫性障害のパターンを把握して治療や対策に役立てられるでしょう。
強迫性障害の症状が起きるきっかけの場面や状況が分かると、対処もしやすくなります。
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強迫性障害の症状は年齢により異なりますか?
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年齢や発症時期により症状が異なることがあります。子どもなどは、学業や友人関係に影響を受けることが多く、大人では職場や家庭に関することが影響を与えます。
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強迫性要害は他の精神疾患と併発しますか?
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強迫性障害は、パニック障害やうつ病など、他の精神疾患と併発することがあります。
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強迫性障害はどれくらいの期間治療が必要ですか?
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治療期間は個人差がかなりあります。数カ月から数年あるいは10年単位となる場合もあります。


