適応障害とは

適応障害とは

適応障害とは、自分の置かれた新たな社会環境にうまく慣れることが出来ず、不安感や抑うつ気分、不登校、出勤拒否、対人トラブルなど、様々な症状・問題が出現し、社会生活に支障をきたすようになる病気です。人生の様々な段階で起こりますが、特に就学や就職、転職、結婚、離婚など、生活環境が大きく変わった際によく見られます。ご本人が「新たな環境にうまく適応しなくては」と思ったとしても、なかなか思い通りに事が運ばない。そのような環境変化のストレスが原因となりうるのです。
なお、不安感を引き起こしている原因ははっきりしているので、その原因から離れることによって症状は次第に改善していきます。しかし、現実的には転職や転校などに躊躇せざるを得ないことも多いでしょう。このようにストレスの原因から離れることが出来ないケースでは、症状が慢性化することもあります。
適応障害の症状は下記のとおりです。

  • 気分の落ち込みや沈んだ気分
  • 興味喪失ややる気の低下
  • 疲れや倦怠感、エネルギー不足
  • 食欲不振や体重減少
  • 睡眠障害(寝付きが悪くなる、途中で目が覚めるなど)
  • 集中力低下や記憶力低下
  • 身体的不調(頭痛やめまい、胸の痛み、肩こり、腹痛など)
  • イライラや怒り、不安感、落ち着きのなさ
  • 社交性の低下や人と接することが苦手になる

治療法

原因となっているストレスを軽くするようにします。環境を調整し、適応しやすい環境を整えるわけです。もっとも、実際には転職や転校などの環境変化が難しいケースも多いので、思い通りに進まないこともあります。そうしたケースではカウンセリングや薬物療法などが必要となります。

  • カウンセリング

    カウンセリングは、ストレスに対処するためのスキルを身に付けたり、ストレスを軽減するための方法を学ぶことができる方法です。具体的には、認知行動療法や対人関係療法などが用いられます。

  • 薬物療法

    薬物療法は、抑うつ症状や不安症状を軽減するために使用されます。主に抗うつ薬や抗不安薬が用いられます。薬物療法は、カウンセリングやストレス管理技術などと併用されることが多く、より効果的な治療効果が期待できます。

適応障害の治療の流れ

適応障害の原因を取り除くのがまず第一歩です。上述したように転校や転職などは非現実的ということもあるので休学や休職を認めてもらうこともあります。そして、カウンセリングや薬物療法を行い、徐々に症状が改善し環境に適応できるようになってきます。改善してから少なくとも半年から1年は油断せず加療が必要です。

よくある質問

適応障害を放置するとどうなりますか?

ストレス因から離れても気分の落ち込みなどがとれなくなり、うつ病など他の病気に進行してしまう可能性があります。
基本的に適応障害の症状は、ストレス因から離れればおよそ6ヶ月以内には改善します。
しかし、ストレス因となっている物事を我慢しつづけるなどして症状を長らく放置してしまうと、症状が改善しにくくなります。
具体的には、ストレス因から離れても気分がずっと晴れない、何をしても楽しめないといった状態になる可能性があります。

明るい人が適応障害を患っている可能性はありますか?

適応障害の症状は、強い心的ストレスに適応しようとする反応として現れるものです。抑うつの程度が重くない場合もあり、努めて明るく振る舞っている場合もあります。そのため、悩んでいるかなと思ったら、よく相談にのってあげるなどして受診へ結びつけるといいでしょう。

うつ病と適応障害の違いはなんですか?

適応障害は、明らかなストレス因子(職場や家庭内の状況や、日常的な出来事など)に反応して、うつ状態や不安状態になり、重い苦痛や生活に支障をきたす状態です。
基本的にはストレス因子がなくなれば、症状は軽快すると定義されています。
一方、うつ病の診断基準では、ストレス因子の有無に関係なく、抑うつ気分などの症状が2週間以上のほとんど毎日、一日中現れている場合などと定義されます。
適応障害とうつ病を見分けるのは難しく、例えば仕事が原因で症状が出現した場合、休職などによってストレス因子から離れるまでは、ストレス因子の有無による症状の変化を観察することができません。
医療機関を受診した場合でも、初期の時点では、両方の可能性を考慮しつつ治療をすることになります。
自身の症状が適応障害なのか、うつ病なのか気になる場合、医療機関に相談してみましょう。

どのような人が適応障害になりやすいですか?

ストレスに対処することが得意でない人は、適応障害になりやすいです。
特に、自分の感情の扱いに慣れていなかったり、他人に相談するのが苦手だったりする人は、悩みや問題を一人で抱え込んでストレスをためてしまうことが多いです。
また、繊細で傷つきやすく、さまざまな物事に対して敏感に反応してストレスを感じてしまいがちな人も、適応障害を発症しやすいといえます。

どのような場合に家族が原因で適応障害になりやすいですか?

家族の病気や不和、行動の制限、介護や育児など多様な例が考えられます。
ストレス原因に関して過度に心配したり繰り返しつらいことを考えたり、といった状況が続いているようであれば、心療内科や精神科で相談してみることをおすすめします。

適応障害は繰り返しますか?

適応障害は再発する場合もあり、ストレス因子をコントロールすることが重要です。
適応障害の再発には、ストレス因子による影響が大きいと考えられています。
例えば仕事の過労が原因で適応障害を発症した方が、改善後に再び同じ職場に戻ったあとに、再度過労によって適応障害を引き起こしてしまうケースなどがあります。
ストレス因子を特定し、環境調整をどのように行っていくかを考えることが重要です。
ストレス因子はひとつとは限らず、複合的に存在していることもあるため、個々の状況に応じた対応が必要となります。