摂食障害とは

摂食障害とは

摂食障害とは、食べ物への極端な考え方や行動が健康を損なう状態を指します。過食症状は、過剰なダイエットによる食事制限や、大量の過食と嘔吐の繰り返しです。自分の体型を過剰に気にし、実際の体重が低くても「太っている」と認識してしまいます。さらに痩せようとする強迫観念が支配的になります。食事の量が極端に少なかったり多かったりと、質が偏り日常生活にも支障をきたすなど、心身ともに深刻な影響が出ます。

摂食障害には大きく分けて2つのタイプがあります。1つは「拒食症」で、過剰なダイエットや運動で食事制限を繰り返す低体重状態です。もう1つが「大食症」で、過食と嘔吐・下剤乱用を繰り返す過食嘔吐のタイプです。どちらも食べ物への異常なこだわりから起こる深刻な病態です。

摂食障害の病態

摂食障害のある人は、食べ物や体型、体重に異常なほど強くこだわり執着します。
例えば、女性モデルのような極端にスリムな体型を理想として追求し、BMIが15程度の低体重であっても「まだ太っている」と感じ続けます。健康被害が出る危険な状態でありながら、自覚がなく異常とは思えない状態となってしまいます。
食事面では、1日の摂取カロリーを極端に低く制限を続けたり、一方でケーキやアイスなどを一時的に大量に食べ過ぎてしまい、その後すぐに指を突っ込んで無理やり吐いたりと、食べる量が極端に偏っています。
また、例えばパン屋の前を通り過ぎた際に、食べたい欲求抑えられなくなってしまい、大食いをしてしまい、その後強制的に下剤を使って排泄させるなど、食習慣が異常な状態になってしまうケースもあります。
鏡で自分の姿を見ても、スリムな体型なのに「私はとてもデブだ」と過剰に太っていると認識し、常に「もっと痩せなければ」と強迫的に考えてしまいます。実際の体型と認識のギャップが大きく、強迫的な思考に囚われてしまうのです。
さらに、体重を僅かでも増やすと、すぐさま食事制限や過剰な運動で体重を落とそうとします。一時的な体重増加に過剰に反応し、その後の食事制限がより極端になるという悪循環にも陥ります。この異常な体重コントロールが、次第にコントロールを失っていく原因になります。
摂食障害の代表的な症状は、BMIが18以下の低体重でありながら、過剰な痩せ願望とダイエットを続けることです。1日の食事量をごくわずかに抑え、過剰な運動を行うなどして、常にカロリー消費を上回るような健康を損なう行動に走ります。実際の体重は低いのに、鏡を見ても自分は太っているように見え、さらに痩せなければならないという強迫観念にとらわれ続けます。

日本における摂食障害の性別の割合

日本における拒食症の男女別の割合は、女性が0.9%~2.2%、男性が0.2%~0.3%で、女性の方が多いことがわかります。
一方、過食症の場合は女性が1.5%~2%、男性が0.5%となっており、これも女性の発症率が高いのがわかります。

摂食障害の症状

  • 症状

    01

    心の症状

    • 体重や体形への不満、強いやせ願望、体重が増えることへの恐怖心がある
    • 自尊心が低い(生きている価値が無いと思う。他人を見ると自分よりも細いかどうか気になる。)
    • 精神的な苦痛がある
    • 体重や体形への不満、強いやせ願望、体重が増えることへの恐怖心がある
    • 自尊心が低い(生きている価値が無いと思う。他人を見ると自分よりも細いかどうか気になる。)
    • 抑うつ気分や情緒不安定、気分の浮き沈み・変化が大きい、こだわりが強くなる、イライラする(体重次第で自己評価が変わる。孤独感が強くなり、カッとする、生きていることをつらく感じる。こだわりが強くなり、悪循環から抜け出したいと思っても、こだわりから抜けられず自分がだめな人間に思えたり、生きている価値がないように思えたりする。)
    • 周囲や社会から孤立していると感じる
    • 集中力の低下や仕事効率の低下がある
    • 性欲が低下している
    • 人との交流を避ける体の症状
  • 症状

    02

    体の症状

    • 吐きだこがある
    • 極端な体重の増加や、減少がある
    • 栄養失調状態により、やせすぎ、貧血、低血圧、月経が止まる(無月経)、月経が不規則、疲れやすい、寒がり(低体温)、胃もたれ(肝臓・腎臓・胃腸の障害)、腹部不快感、便秘、むくみやすい・しびれ等がある
    • 骨折しやすくなる
    • 手や足の黄色化
    • 睡眠障害がある
    • 嘔吐が続くことで唾液腺が腫れたり、歯の表面が溶けたりする
    • 低体重が長期間続くことによる脳萎縮
    • 徐脈
    • 高コレステロール血症
    • 脱毛
    • 体毛の密生化
    • 皮膚の乾燥
    • 嘔吐や下痢(下剤乱用など)でカリウムが失われ、体内のナトリウム・カリウム・塩化物といった電解質のバランスが崩れ、不整脈の出現、深刻なときは心不全を起こし死亡することもある

摂食障害の治療

カウンセリングと食事指導が大切

摂食障害の治療では、まず医師や専門カウンセラーによる心理療法が不可欠です。心療内科や精神科で、食べ物に対する極端な考え方や行動の偏りを正していきます。同時に、管理栄養士による適切な食生活指導を受け、バランスの良い食事と適正な摂取カロリーを身につけていきます。心理面と栄養面の両面からのケアが重要となります。
心理療法では、認知行動療法を中心的に行います。食べ物や体型への極端な考え方を認識し、それを直していくプロセスを踏みます。カウンセリングを通して、「スリムでなければ価値がない」といった偏った価値観を修正し、自己肯定感を高めていきます。
さらに、医師による適切な薬物療法も行われる場合があります。うつ症状が強い場合は抗うつ薬、不安が高い場合は抗不安薬を投与するなど、心理状態の安定を図ります。
ただし、薬物療法は一時的な対症療法に過ぎず、根本的な心理療法が大切になります。
一方の食事指導では、管理栄養士が患者一人ひとりの状況に合わせた食事プランを提案します。無理のない範囲で徐々に適正エネルギー量を増やしていき、最終的にはバランスの取れた食生活を身につけさせることが目標です。個別の食べ方のクセを直し、正しい食習慣を定着させていきます。
このように、心理と食事の両面からのアプローチが不可欠です。治療に際しては、医師、看護師、臨床心理士、管理栄養士などが連携したチーム医療体制が求められます。

よくある質問

摂食障害拒食証は治りますか?

ごく普通の思春期・青年期の問題を契機に発症し、ストレスへの誤った対処方法の結果ですから、治さなければなりませんし、治ります。
ただ、もともとの性格に病的な偏りがある場合 (人格障害)、家族のサポートのなさや崩壊家族など療養環境が非常に悪い場合は慢性化しやすいといえます。
5年後の治療率は50%です。残り25%は体重のみ回復して月経がまだ来ない状態です。
20% は通学通勤はできるものの、やせており、偏食や友人と会食できないなどの悩みを抱えて、病気によって社会生活に影響を受けています。残り 5%は、さらに体重が減ったり、社会から退いた生活を余儀なくされています。

摂食障害の拒食証が治るきっかけのようなものがありますか?

本人が体重を回復させるきっかけには、正確な医学情報を聞いたこと( やせていると身長が伸びないという説明を聞いて怖くなったなど) 、体力のなさを実感する経験、就職や進学で体重増加を要求される、無理をせざる得なかった環境が変化して気持ちが楽になった、家族が味方だと実感できるような出来事、親友や尊敬する他人のアドバイスなどがあります。
また、ストレスを適切な方法で対処できるようになることには、一つの出来事というよりは、体験の積み重ねと適切なアドバイスが必要です。学校や社会での出来事の中で、トライ アンド エラー を積み重ねることで、思い込みや深読みを避け、同じことでもストレスと感じることが減り、物事に優先順位をつけて適切に柔軟に対応できるようになります。

摂食障害の拒食症が回復していく過程での注意点は何ですか?

「体重が増えれば治る」は間違いです。体重が増えると、やせていたときには考えないで逃げていた現実の問題が見えてきます。本人はつらくなってきます。体重が増えたことを手放しで喜んで、本人の心理的なつらさを放置することは厳禁です。
「体重が回復して体が楽になった反面、心理的にはつらくありませんか?」と気遣い、逃げていた現実の問題の解決を手伝う姿勢が大切です。
体重が回復する過程で再びやせる場合や、暴れたり自傷行動など問題行動が始まる場合には、本人は現実にまだ向き合いたくないのです。
摂食障害は本人のわがままでなく、心身症という病気です。心の問題を心で解決できず、体に症状として出るのです。ダイエットが原因ではないものの、「やせていたい気持ち」が病気の本質です。
彼女たちがやせる前に、「私は~で困っているので助けてください」と訴えてくれたらどんなに楽だろうと思います。しかし、彼女たちは自分自身でさえ、困っていることに気がつかない、言葉を捜せない、言っても誰も助けられないと思いこんでいるのです。やせてしまうと、問題はもっと複雑になります。
やせによるおかしな行動や精神症状が病気の主人公になり、本人も家族もその症状をどうにかしようと時間と労力を浪費して疲れ果て、本来の問題はますます見えなくなります。その原因や症状を早期に正しく理解し、家族のサポートなど適切な対応をすれば治る病気なのです。

男性の摂食障害の経過はどうですか?

男性患者の場合も、発症は思春期から青年期です。
一般的な性格傾向も女性患者と似ていて、内向的(内弁慶で母親っ子)、強迫的で、几帳面で、男性にしては小心という点も指摘されています。
また、表に出さないものの負けず嫌いで、学業成績もよい場合が多く、理想が高くて失敗をおそれるという傾向も同じです。
やせのきっかけも、思春期~青年期の挫折体験などのストレスや体型へのこだわりが多く、進路の迷いや人間関係のトラブルに対して、誤ったストレス解消方法として過食が出現する点も女性と同じです。
慢性化し長期化すると、家庭内暴力、万引き、アルコールへの依存などの問題行動が合併する傾向があるのも女性と同じです。
希望は高いもののコーピングスキルが未熟なために、適切に対処できずに発症するという点もまったく同じです。
ただ、女性に比べて男性は、家事手伝いでもよしとする風潮がないので、本人自身と周囲の回復後の期待が高く、それがむしろ回復の障害になることがあります

チューイング行為とは何ですか?

噛み吐き行為とも呼ばれるチューイングは、食べ物を口の中に入れて噛むだけで、飲み込まずに吐き出すという行為を指します。 体重を増やしたくないから…と行うチューイングは摂食障害に現れることが多い症状です。

摂食障害のBMI基準はいくつですか?

BMI[体重(kg)÷(身長(m))2]が17.5以下です。

摂食障害は若い女性がかかる病気ですか?

摂食障害が男性よりも女性に多いこと、若い人がかかりやすいことは事実ですが、男性や中高年の患者さんも決して少なくありません。最近の米国での調査では、従来考えられていたよりも(女性:男性=10:1)、ずっと男性患者の割合が高かった(女性:男性=3:1)と報告されています。また、若いころに発症して治らないまま年月がたち、中高年になる場合も少なくありません。摂食障害は男女問わず、全ての年代で、誰でも罹りうる病気なのです。

治したいけど太りたくないです。

そのような気持ちになるのが摂食障害の特徴です。ただ治したい気持ちがあるのなら思い切って治療を受けてみましょう。治療のゴールは病気を治すことであり、体系を太らせることではありません。

摂食障害にはどんな特徴やサインがありますか?摂食障害が疑われる場合まずどうすればよいですか?

まず、摂食障害(特に神経性やせ症)では急激にやせたり、体重減少と増加を繰り返したりします。一日に何回も体重計に乗ったり、体重が減っているのに、まだ自分が太っていると主張したりします。
食事量が極端に減ったり、炭水化物、揚げ物、肉類、お菓子などを避けたり、低カロリーの食品ばかり食べたり、中には献立に細かく口を出す人もいます。食べていないのに「食べている」「お腹が空かない」と言い訳をしたり、人と一緒に食べるのを拒んだりします。
一方、食べだしたら止まらなくなることもあります。大量の食べ物をため込んだり、短期間で家の食べ物がなくなったりする場合は、過食のおそれがあります。
また、人一倍よく動くようになったり、下剤や利尿剤を大量にため込んだりすることがあります。食後に頻繁にトイレに行く、頬や顎の不自然な腫れ、手の甲の「たこ」、虫歯や歯の変色などがある場合は、嘔吐しているおそれがあります。
さらに、気分の浮き沈み、イライラ、隠し事が多くなるなどの変化も出てきます。
そのような場合、当院に相談して下さい。