統合失調症とは

統合失調症とは

脳の神経伝達物質であるドーパミンが過剰になり発症します。どの年齢でも発症しますが、思春期から青年期(15歳頃~35歳頃)に特によく発症します。初期の段階では、親への反抗、不機嫌、成績の低下、友人との交流減少などがみられますが、徐々に幻聴や妄想などの特徴的な症状が出現してきます。世界的に100人に1人が発症する決して少なくはない割合で発病します。

統合失調症の症状

陽性症状

陽性症状とは、実際に起こっていないものを患者本人のみが体験する幻覚、妄想、思考と自我の障害などの症状のことをいいます。

  • 幻覚

    幻覚の症状としては、周囲に誰もいないのに患者を批判したり脅したりするような声が聞こえる、頭の中で複数の人間が会話しているように聞こえるなどの幻聴、存在しないものが見える幻視などがあります。

  • 妄想

    妄想とは、現実には起こりえないことを信じ込んでしまう状態のことです。妄想の症状としては、誰かに監視されている、誰かに悪口を言われている、いやがらせを受けているというような被害妄想や、テレビやインターネットに自分のことが流されているなどの関係妄想があります。

  • 思考と自我の障害

    そのほかの症状として、思考と自我の障害があります。思考の障害とは、考えにまとまりがなくなることです。考えをまとめることができず、めちゃくちゃな会話をしてしまったり、状況に合わないちぐはぐな行動を起こしたりします。自我の障害では、自分と外の世界との境界線が曖昧になり、自分の考えがほかの人間に支配されていると感じるようになります。

陰性症状

陰性症状には意欲や自発性の低下、あるいは意欲の減退、喜怒哀楽などの生き生きとした感情表現が乏しくなることなどがあります。
友人付き合いをしなくなったり、家に引きこもるようになったりするほか、入浴や着替えをしなくなる、見た目を気にしなくなるといった行動として現れます。

認知機能障害

認知機能障害とは集中力や記憶力が低下し、ものごとをうまく処理できなくなることをいいます。
たとえば、目の前の仕事や勉強に集中できなくなったり、他人の指示どおりにものごとをこなせなくなったりします。統合失調症ではこのような障害が現れ、学業や仕事、人間関係など生活全般に影響が及びます。

治療

統合失調症の治療では、薬物療法や心理社会的治療などが行われます。これらの治療により症状緩和を図り、通常の社会生活を送ることを目標とします。
また、統合失調症は慢性的に経過し、症状が再燃することもあります。そのため、状況に応じた治療を継続的に行っていくことが重要です。

薬物療法

抗精神病薬

抗精神病薬とは統合失調症の治療薬で、幻覚、妄想などの陽性症状や不安・不眠・興奮、あるいは感情表現の低下などの陰性症状を改善する目的で処方されます。

服薬の継続

抗精神病薬によって症状が改善した後も、薬物療法を継続します。薬には再発を予防する効果があり、中断すると高い確率で再発するリスクがあります。再発を繰り返すと症状が強くなり、治りにくくなる可能性があります。

毎日の服薬が困難な場合は、1回の注射で効果が長く続く薬に変更することもできます。症状が治まっても勝手に服用をやめたりせずに治療を続けることが大切です。

薬の副作用

抗精神病薬には副作用がありますが、多くの場合、適切な管理と調整により軽減できます。主な副作用には、錐体外路症状(動作がゆっくりになる、手が震える、体がこわばる、じっとしていられないなど)、のどの渇き、便秘、眠気、体重増加などがあります。口や手足など体の一部が勝手に動く症状が現れた場合は、長期服用による遅発性ジスキネジアの可能性もあります。

副作用が気になる場合は、自己判断で服薬を中断することは避け、必ず医師に相談するようにしましょう。薬の種類や量の調整、あるいは副作用を抑える薬の追加により、副作用を最小限に抑えながら症状改善の効果を得ることができます。

心理社会的治療

病気の対処方法を身につけ、安定した社会生活を送れるようにすることを目標に専門家と話をしたり、リハビリテーションを行ったりする心理社会的治療が行われます。

心理社会的治療には、心理教育、認知行動療法などの心理療法、生活技能訓練(SST)、作業療法などがあり、患者の自己理解や他者との関わり方、日常生活や社会復帰に必要な技能の習得などを目指します。

  • 心理教育

    病気や治療について正しい知識を身につけ、難しい状況を乗り切るための対処法などを学ぶ治療法です。
    対象となるのは本人、もしくは家族です。病気や治療に対して前向きに考えられるようになることを目指します。

  • 作業療法

    軽作業や運動、リラクゼーションを通じて、生活に必要なスキルや応用力、社会適応力を高め、社会参加を促します。デイケアなどでは、より社会的な集団プログラムを実施し、コミュニケーション能力の向上や対処方法の習得を目指します。

  • 生活技能訓練(SST)

    ロールプレイやモデリング(手本)などの手法を活用し、コミュニケーションの取り方やストレスへの対処法を学び身につけることで、社会生活をより円滑に送れるよう支援します。

統合失調症の治療の流れ

統合失調症は本人の自覚がないことが多いため、それを前提に話をすすめます。一人でいるのに誰かと話している様子があったり、人の視線を極端に恐れたり、誰かに指示されているような奇異な行動が出現したりして、それを学校や会社の方、家族、友人などが見つけて発病に気がつきます。本人は正常だと思って、日常生活を過ごしています。そのため、学校や会社の方、家族、友人などが指摘しても最初は病識がない反応をします。しかし、周囲の説得で何とか精神科の医療機関を受診することになります。そこで医師の診察があります。明確に幻覚、妄想、思考形式の障害、奇異な行動などの諸書状を診察でみていきます。そして、統合失調症という正式な診断が出ることになります。まずは抗精神病薬による薬物療法を開始します。ここでも、自分は病院に行っただけで病気ではないので内服を拒否する場合があり、薬を自ら飲まない場合もあります。その際はやはり粘り強く本人を説得して、内服による加療を受けることになります。薬を調整しながら時間が数カ月以上に渡って症状を改善するための治療が続きます。そして、薬の効果で症状は改善していきます。その後、心理的社会療法にて症状のさらなる安定化を図ります。統合失調症は長い期間の加療が必要です。

よくある質問

統合失調症の発症後の将来はどうなりますか?

統合失調症を発症してから20年以上の長期にわたる経過を調べた複数の研究から、治療経過が良好な患者さんは50%前後を占めることが共通して示されています。また、40~50%の患者さんは中等度の症状が続くものの、一応の社会参加ができる水準まで回復する、とのデータもあります。したがって、統合失調症の人の約半数が社会的生活を営むことができていると考えられます。

統合失調症で有名人がいますか?

統合失調症で才能を発揮した方は多くいます。その一例として画家のゴッホ、ムンク、作家の芥川龍之介、夏目漱石などがいます。

統合失調症になる割合はどのくらいですか?

100人に1人です。そのため決して珍しい病気ではありません。

親が統合失調症の場合の遺伝の割合はどうですか?

片方の親が統合失調症の場合、10人に1人が統合失調症になり、両親共に統合失調症の場合は2人に1人が統合失調症と遺伝の割合がとても高いです。