「精神分裂病」から「統合失調症」へ名称が変わった理由と、症状・原因・治療法を解説
「統合失調症と精神分裂病は違う病気なの?」
「昔は精神分裂病と呼ばれていたのに、なぜ病名が変わったの?」
「統合失調症は人格が分裂する病気?」
このような疑問を持つ人は少なくありません。
結論からいうと、統合失調症と精神分裂病は、基本的に同じ疾患を指す名称です。
日本では、かつて「精神分裂病」という病名が使われていましたが、2002年に日本精神神経学会が「統合失調症」へ名称を変更しました。
ただし、病名が変わったことによって、病気そのものが別の疾患になったわけではありません。
今回は、病名が変更された理由、統合失調症の特徴、主な症状、原因、治療法について分かりやすく解説します。
1.統合失調症と精神分裂病は同じ病気?
統合失調症は、英語で schizophrenia と呼ばれる精神疾患です。
日本では長い間「精神分裂病」という訳語が使われていました。
しかし、「分裂」という言葉が、人格が二つに分かれる、人格が崩壊するといった誤解につながりやすく、患者さんや家族への偏見を強めることが問題となっていました。
そのため、2002年に「統合失調症」という名称へ変更されました。
| 比較項目 | 精神分裂病 | 統合失調症 |
|---|---|---|
| 使用時期 | 主に2002年以前 | 2002年以降 |
| 英語名 | Schizophrenia | Schizophrenia |
| 指す疾患 | 同じ疾患 | 同じ疾患 |
| 名称の印象 | 人格の分裂を連想させやすい | 精神機能の統合の障害を表す |
| 現在の医療現場 | 原則として使用しない旧称 | 正式な病名 |
「精神分裂病」は統合失調症の旧称であり、別の病気ではありません。
ただし、診断基準や病気の理解は、その後の医学の進歩によって更新されています。
2.なぜ「精神分裂病」から「統合失調症」に変わったのか?
病名変更には、主に次のような背景がありました。
① 「人格が分裂する病気」という誤解
旧称の「精神分裂病」は、複数の人格が存在する病気だと誤解されることがありました。
しかし、統合失調症は人格が二つに分かれる病気ではありません。
② 患者さんや家族への偏見
「精神分裂病」という言葉には、社会的な偏見や否定的な印象が伴っていました。
病名を変更することには、病気への理解を深め、患者さんが治療を受けやすくするという目的がありました。
③ 病気の特徴をより適切に表現するため
統合失調症では、思考、知覚、感情、行動などの精神機能がうまく協調しなくなることがあります。
「統合失調症」という名称は、こうした特徴を表現するために採用されました。
3.統合失調症はどのような病気?
統合失調症は、思考、知覚、感情、行動などに変化が現れる精神疾患です。
代表的な症状には、幻覚、妄想、まとまりにくい思考、意欲の低下などがあります。
発症は思春期後半から若年成人期に多いものの、それ以外の年代でも起こることがあります。
統合失調症の症状は、大きく次の3つに分類して説明されることがあります。
陽性症状
幻覚・妄想・思考や言動のまとまりにくさ
陰性症状
意欲低下・感情表現の減少・社会的引きこもり
認知機能の障害
注意力・記憶力・遂行機能などの低下
4.陽性症状とは?
陽性症状とは、通常は存在しない知覚や確信などが現れる症状です。
幻覚
実際には存在しない音や声が聞こえたり、物が見えたりする症状です。
特に、誰もいないのに人の声が聞こえる「幻聴」が知られています。
妄想
客観的な事実と異なる考えを、強く確信する状態です。
例えば、「誰かに監視されている」「自分の考えが周囲に知られている」といった内容がみられる場合があります。
思考や言動のまとまりにくさ
話のつながりが分かりにくくなったり、会話が成立しにくくなったりすることがあります。
ただし、幻聴や妄想があるからといって、必ず統合失調症とは限りません。気分障害、薬物の影響、身体疾患などでも同様の症状が現れることがあります。
5.陰性症状とは?
陰性症状とは、意欲や感情表現など、本来備わっている精神機能が低下した状態を指します。
代表的な症状には、次のようなものがあります。
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意欲の低下: 仕事、勉強、家事などに取り組めなくなる
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感情表現の減少: 表情や声の抑揚が乏しくなる
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会話の減少: 自発的に話すことが少なくなる
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社会的引きこもり: 人との交流を避けるようになる
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楽しみの減少: 趣味などに関心を持ちにくくなる
陰性症状は周囲から「怠けている」「やる気がない」と誤解されることがあります。
ただし、うつ症状、薬の副作用、強い不安などでも似た状態が現れるため、慎重な評価が必要です。
6.統合失調症と解離性同一性障害の違い
「精神分裂病」という旧称から、統合失調症と多重人格を同じ病気だと考える人もいます。
しかし、両者は異なる疾患です。
| 比較項目 | 統合失調症 | 解離性同一性障害 |
|---|---|---|
| 主な特徴 | 幻覚・妄想・思考のまとまりにくさなど | 複数の同一性状態と記憶の空白など |
| 主な病態 | 精神病症状などを伴う精神疾患 | 解離症の一つ |
| 人格が分裂する病気か | いいえ | 自己同一性の不連続性が中心 |
| 主な治療 | 抗精神病薬、心理社会的支援など | 心理療法を中心とした支援 |
解離性同一性障害は、かつて「多重人格障害」と呼ばれていた疾患です。
統合失調症とは診断や治療の考え方が異なります。
7.統合失調症の原因は?
統合失調症の原因は、現在も完全には解明されていません。
遺伝的な要因、脳の発達、神経伝達の働き、環境的な要因などが複雑に関係すると考えられています。
ドーパミンなどの神経伝達物質の働きが症状に関係することも知られています。
また、強いストレスや睡眠不足などが症状の悪化や再発に関係する場合があります。
しかし、統合失調症は本人の性格や育て方だけが原因で起こる病気ではありません。
8.統合失調症の治療法
① 薬物療法
抗精神病薬が治療の中心となります。幻覚や妄想などの症状を軽減し、再発を防ぐことを目指します。
② 心理社会的支援
疾患教育、認知行動療法、家族支援などを、本人の状態に応じて組み合わせます。
③ リハビリテーション
生活技能訓練、就労支援、デイケアなどを通じて、日常生活や社会参加を支えます。
④ 家族への支援
病気への理解を深め、本人への接し方や再発時の対応について一緒に考えます。
9.統合失調症は治る病気なのか?
統合失調症の経過には個人差があります。
治療によって症状が軽減し、仕事や学校、家庭生活を続けられる人も多くいます。
一方、症状が長期にわたって続き、継続的な支援が必要になる人もいます。
治療では、症状を抑えることだけでなく、**本人が希望する生活を取り戻すこと(リカバリー)**が重要です。
適切な薬物療法と心理社会的支援を組み合わせることで、再発予防や生活機能の改善を目指すことができます。
10.家族や周囲の人はどう接すればよい?
統合失調症の症状がある人に対しては、頭ごなしに否定したり、強く説得したりすることを避け、落ち着いた対応を心がけます。
例えば「誰かに監視されている」と訴える場合には、「そんなことは絶対にない」と強く否定するのではなく、「それは怖かったね」「不安が強いんだね」と本人の苦痛を受け止めることが大切です。
ただし、妄想の内容を事実として肯定する必要はありません。
また、幻覚や妄想が急に強くなった、ほとんど眠れていない、食事や水分が取れない、自分や他人を傷つける危険がある場合には、早急に医療機関へ相談する必要があります。
まとめ:病名が変わっても、適切な理解と治療が大切
統合失調症と精神分裂病は、基本的に同じ疾患を指します。
2002年に「精神分裂病」から「統合失調症」へ名称が変更されたのは、旧称が招きやすかった誤解や偏見を減らし、病気の特徴をより適切に表現するためです。
統合失調症は、人格が二つに分裂する病気ではありません。幻覚、妄想、意欲低下、認知機能の変化などが現れる精神疾患です。
病名への誤解をなくし、早期に適切な診断と治療につなげることが、本人の回復と社会生活を支えるうえで重要です。


